任意売却ってなに?任意売却のメリット・デメリットを解説

任意売却について

質問1

任意売却とは何ですか?どんなときに、どうやって行うのか詳しく知りたいです。

回答

任意売却(にんいばいきゃく)とは、住宅ローンや不動産担保ローンの返済が困難になった際に、債権者(金融機関)と協議の上で担保不動産を自主的に売却することです。

ポイントは「任意」、つまり裁判所の強制ではなくあくまで借主(あなた)の意思に基づく売却である点です。

返済できないからといってすぐ競売になるのではなく、まずは金融機関も話し合いに応じます。

その結果、合意のもと市場で物件を売却しその代金でローン残債をできる限り返済する方法が任意売却です。

任意売却の背景

ローンを3~6ヶ月延滞すると、多くの金融機関は法的手続き(競売)の準備に入ります。

具体的には「期限の利益の喪失」という扱いになり、一括返済を求められます。

それでも支払えなければ裁判所に競売開始の申し立てがなされます。

競売になると、もう売却プロセスは裁判所管理下で進み、債務者(あなた)の意思はほとんど反映されません。

そして、競売落札額は市価より低くなるのが通常です。

結果、売ってもローンが残り、しかも強制的に退去させられるという厳しい状況に陥ります。

そこで、そうなる前に「自分で売って借金を減らしたい」と申し出て行うのが任意売却です。

金融機関にとっても競売より高く売れた方が回収額が増えメリットがあるため、双方合意できるケースが多いです。

任意売却のメリット

市場価格に近い価格で売却できる

任意売却は普通の不動産売買と同じように、市場に物件を出して買い手を探します。

そのため、競売に比べて高く売れる可能性が高いです。

競売では内覧(下見)もできず、公告から入札まで短期間なので買い叩かれがちですが、任意売却なら時間をかけて適正価格で売却できます。

高く売れればそれだけローン残債が減り、残る借金負担も軽くなります。
売却プロセスを自分でコントロールできる

競売は裁判所主導で進み、売却時期条件あなたの希望はほぼ反映されません。

一方任意売却では「いつまでに売りたい」「この価格以上で売りたい」といった希望をある程度考慮できます。

不動産会社と相談しながら進めるので、引越し時期なども交渉可能です。

例えば「子供の卒業までこの家に住みたいので○月までは売却完了しないようにしたい」といった相談にも乗ってもらえます。

必ずしも叶うとは限りませんが、努力はしてくれます。

競売だと買受人が決済したら即立ち退き要求が来て、居座れば強制退去なので、その差は大きいです。
周囲に知られにくい

任意売却で売りに出す場合、表向きは普通の「売却物件」として市場に出ます。

そのため、ご近所に「この人ローン滞納している」とは分かりません。

一戸建てなら看板を出さず水面下で買い手を探すことも可能です。

競売だと物件情報がインターネットや新聞公告に載り、知人に知られる可能性があります。

競売お金に困っている」と一般に思われますから、これは大きな違いです。
引越し代の捻出も交渉できる

任意売却では、売却代金の配分について債権者と交渉が可能な場合があります。

競売だと売上金はすべて債権者に取られますが、任意売却なら「引越し費用として○十万円だけ手元に残したい」と相談できることがあります。

債権者もスムーズに明け渡してもらうため、一定額を認めてくれるケースが多いと言われています。

任意売却のデメリット

手間と精神的負担

任意売却を成功させるには、自分で不動産会社を探し金融機関と交渉し買い手を見つけるという一連のプロセスを踏む必要があります。

その間にも延滞は続いているわけで、精神的プレッシャーは大きいです。

競売ならいっそ開き直れるところを、任意売却は自分で動く分、疲弊するという声もあります。

しかし専門業者がサポートしてくれるので、大抵の場合あなた一人ですべて抱えるわけではありません。
依頼できる不動産会社が限られる

任意売却は普通の売却と違い、債権者との調整や残債処理の知識が必要です。

そのため、どこの不動産会社でも扱えるわけではありません。

経験豊富な業者を探す必要があります。

幸い今は「任意売却専門」の不動産会社や、任意売却支援のNPO法人なども各地にありますので、それらをインターネットで探して相談すると良いでしょう。

依頼先選びを間違えると、時間ばかりかかって結局競売…ということにもなりかねません。
残債が残る可能性

任意売却してもローン残高を完済できない場合、残債務があなたに残ります。

金融機関によって対応は様々ですが、残債については無担保の分割払いを求められるのが一般的です。

つまり「残り○百万円を毎月○万円ずつ払ってください」という取り決めです。

利息を免除してくれる場合もありますが、元金は返していかねばなりません。

返済が難しい額であれば、個人再生や自己破産で整理することも視野に入れましょう。
信用情報への影響

これは任意売却に限った話ではないですが、ローンを3ヶ月以上延滞した時点で事故情報(ブラック)になります。

任意売却をしたから特別に信用情報が汚れるわけではありませんが、任意売却する状況=延滞中ですので、結果的にブラックリスト入りは避けられません。

その情報は完済後5年程度は信用情報機関に残ります。

つまり向こう5年間は新規の借入やクレジットカード作成が難しくなる可能性が高いです。

これをデメリットと感じるかは人によりますが、一応知っておいてください。

質問2

任意売却は具体的にどう進めればいいですか?

回答

一般的な流れは以下の通りです。
金融機関に相談

返済が難しい事情があることを正直に伝え、「任意売却を検討したい」旨を申し出ます。

金融機関内で担当者や上席の承認が必要になりますが、任意売却自体は珍しい話ではないので応じてもらえることが多いです。

ポイントは競売開始前に早めに相談することです。

競売手続きが進んでしまうと取り下げが面倒になります。
任意売却を扱える不動産会社に依頼

金融機関が許可したら、不動産会社に売却を依頼します。

先ほど述べたように、任意売却に強い業者を選びましょう。

金融機関から紹介してもらえる場合もありますし、自分でネット検索して「任意売却サポート〇〇」のような業者に連絡しても構いません。
多くは無料相談を受け付けています。
物件価格の査定・債権者との調整

不動産会社が物件を査定し、債権者(金融機関)に「◯◯万円くらいで売り出したい」と打診します。

債権者はローン残高との兼ね合いで「最低でもこの価格以上で売ってください」というラインを提示します。

例えばローン残高2000万円で物件の市場査定額が1800万円なら、「1800万円前後で売って、足りない分200万円は分割返済してください」といった条件になるかもしれません。

債権者と価格や方針の合意が得られたら、市場に売り出します。
販売活動と購入希望者の選定

通常の不動産売却と同様にレインズ等に物件情報を登録し、買主を探します。

内覧にも対応します。

差し押さえなどがされている場合でも、任意売却なら内覧OKです。

購入希望者が現れたら、債権者と相談しながら売却条件を詰めていきます。

債権者の同意が得られないと売買契約は成立しない点が一般の売却と異なります。
売買契約・決済

債権者がOKした購入希望者と売買契約を結びます。

決済日には買主からの代金でローン残債を支払い、抵当権を抹消します。

同時に不動産を引き渡し、任意売却完了です。

残債が残った場合は、別途返済契約を結ぶ流れになります。
引越しと残債処理

売却物件に住んでいた場合は引越しします。

任意売却では債権者に頼んで引越し費用を捻出してもらえる場合がありますので、事前に交渉してみましょう。

競売と違い強制的にすぐ立ち退き、ではなくスケジュールも調整済みのはずなので、落ち着いて新生活の準備をしてください。

残った借金については約束通り返済を続けます。

どうしても払えないなら、ここであらためて債務整理(個人再生や自己破産)を検討する段階になります。

任意売却は専門的な部分も多いので、不明点があれば担当の不動産会社や弁護士にどんどん質問しましょう。

競売を回避してできるだけ有利に手放す手段」と割り切れば、精神的にも行動しやすくなります。

競売よりずっとマシ、と考えて前向きに進めることが大切です。