質問1
不動産担保ローンでお金を借りました。借りたお金に税金はかかりますか?
回答

ローンで受け取ったお金は「返済義務のあるもの」であって所得ではないため、課税対象にはなりません。
例えば1,000万円借りても、それは1,000万円の負債が増えただけですので、税法上の利益ではないのです。

質問2
ローンの利息は税金の控除対象になりますか?
回答

住宅ローンの場合、一定の要件を満たせば年末残高の1%を所得税から控除する「住宅ローン減税」という制度があります。
しかし、これは居住用住宅を取得するためのローン限定の特例です。
不動産担保ローンのように使途自由で借りた場合は該当しません。
住宅ローン減税は銀行の住宅ローンなどが対象で、消費者金融系のローンは対象外です。
一方、事業資金や不動産投資目的で借りた場合の利息は経費になります。
例えば不動産担保ローンで事業運転資金を借りたなら、その利息は事業所得の必要経費として申告できます。
同様に、賃貸物件のリフォーム資金などに充てたローン利息は不動産所得の経費になります。
要は「その借金で得た収入」があるかどうかです。

質問3
担保に出した不動産の固定資産税などはどうなりますか?
回答

したがって、固定資産税や都市計画税といった毎年の税金は引き続きあなたに課税されます。
ローン返済中も固定資産税は毎年忘れず納めましょう。
なお、ローン契約時には抵当権設定登記をしますが、この際に登録免許税という税金がかかります。
またローン契約書には収入印紙(契約金額に応じ数千円~数万円)も必要です。
これらは融資実行時に諸費用として支払うことになります。
金融機関によっては事務手数料も課税対象です。

質問4
ローンの返済が苦しく、一部債務免除(チャラに)してもらえることになりました。
この免除額に税金はかかりますか?
回答

債務免除によって得た経済的利益は、「債務免除益」として所得税の課税対象になり得ます。
具体的には、債権者が法人(銀行や消費者金融など)の場合、その免除額は一時所得として所得税がかかるのが原則です。
一時所得には特別控除が50万円ありますが、免除額がそれを超えると超えた分に課税されます(税率は他の所得と合算して計算)。
一方、債権者が個人(例:親が子の借金を肩代わりして帳消しにした等)の場合は、その免除額は贈与とみなされ、贈与税の課税対象です。
年間110万円を超える部分に贈与税がかかります。
ただ、債務免除益には例外規定もあります。
債務者(借主)が明らかに支払不能状態(=資力を喪失)である場合、その人が受けた債務免除益については所得税を課さないというルールがあります。
簡単に言えば「経済的更生を助けるため、破産一歩手前のような人が債務免除されても税金までは取らない」という趣旨です。
例えば自己破産で免責になった借金は非課税扱いです。
同様に、任意整理や個人再生でカットされた借金も、債務者が債務超過であれば課税しない取り扱いがあります。

不安な場合は税理士等に相談すると安心でしょう。
質問5
親が私のローンを肩代わり返済してくれました。この場合、私に贈与税はかかりますか?
回答

親御さんがあなたの代わりにローンを返済したということは、あなたが本来負担すべき債務を親が負担してくれた=あなたがその金額分の利益(贈与)を受けた、と税法上判断されます。
したがって、その金額が年間110万円を超える場合、贈与税の申告・納税が必要になる可能性があります。
ただし、住宅ローンに関しては「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税」という特例が利用できる場合があります。
これは住宅購入や繰上返済資金を両親等から贈与された場合、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。
適用には細かい要件があります(受贈者の年齢や家屋の床面積など)ので、今回の肩代わり返済がそれに該当するかは専門家に確認してください。

質問6
ローン返済中に亡くなったら、そのローンはどうなりますか?
相続との関係も教えてください。
回答

その場合、家は相続人がローンなしで引き継ぐことになります。
団信の保険金は債権者(銀行)に支払われるだけなので、相続人が受け取るわけではなく、税金もかかりません。
団信に未加入、または不動産担保ローンで団信がない場合、ローン債務は相続人に引き継がれます。
厳密には、故人の遺産(プラスの財産)と負債(マイナスの財産)を相続人が包括的に承継します。
相続人は以下の選択肢があります。
単純承認
プラスもマイナスも全部引き継ぐことで、家(不動産)とローン残債の両方を相続します。
以後、相続人がローン返済義務を負います。
そのため、金融機関には速やかに連絡し、今後の返済方法等を相談するようにして下さい。
多くの場合、相続人の方に改めて審査をしてローン名義を引き継ぐ(もしくは借り換える)手続きになります。
収入等の要件を満たせばそのまま返済を続けることも可能です。
もし相続人に返済能力がない場合、金融機関は一括返済を求めてくることもあります。

相続放棄
家も含め一切の財産を相続しない代わりに、負債も引き継がない選択です。
家庭裁判所への申述が必要で、通常は死亡を知ってから3ヶ月以内という期限があります。
放棄すると最初から相続人ではなかったことになります。
例えば子供全員が放棄すれば、次順位の相続人(故人の親や兄弟)に相続権が移ります。
その方たちも放棄すれば、最終的に相続人不在となり、担保不動産は競売などで処理されローンは回収可能な範囲で回収、残債は免除となるでしょう。

限定承認
あまり利用例は多くないですが、「相続によって得た財産の範囲内で負債も支払う」という条件付き承認です。
これをすると、負債を清算してプラスが残れば相続、マイナス超過なら放棄、のような形になります。
ただ手続きが煩雑で相続人全員の同意が必要なので、実務的には相続放棄か単純承認かの二択になることが多いです。
いずれにせよ、相続した不動産にローンが残っている場合、その不動産は抵当権がついたままです。
相続人がローンを払い続ければ問題ありませんが、払えなければやはり競売など法的処理の対象になります。
また、相続税を計算する上では、ローン残高は被相続人の債務として課税価格から差し引くことができます。
例えば家(評価額1,000万円)にローン残高500万円があるなら、正味の相続財産は500万円として相続税の計算がされます。
相続税法上、債務控除といって被相続人の債務は遺産額からマイナスできるからです。

極端に言えば、債務超過なら相続税はかかりません。
質問7
親名義の不動産を担保に子が借りていた場合、親が亡くなったらどうなりますか?
回答

この場合、親が亡くなると担保不動産の所有権が相続人に移転します。
相続人は通常子供さん(借り主)でしょうが、問題は抵当権付きの不動産を相続する点です。
ローン債務自体は子供(借り主)のものなので、そのまま残りますが、担保提供者であった親が亡くなったことで物上保証人が変わります。
実務上は、不動産の相続登記をした上で、引き続き抵当権を存続させる形になります。
子供から見ると「自分の不動産に自分のローンの抵当権がついた」状態になり、以後はそのまま返済を続ければいいことになります。
特に追加の手続きはいりませんが、注意点として、親御さんが物上保証人だったローン契約には「保証人が死亡した場合、他の担保提供を求める」等の特約があることもあります。
その場合、金融機関と相談が必要です。

逆に、親が担保提供者で子が返済者だったのに、子(債務者)が先に亡くなった場合も考えられます。
そのとき親御さん(物上保証人)はどうなるかというと、債務者である子が亡くなってもローン債務自体は子の相続人(配偶者や子供など)に引き継がれます。
もし相続人が支払わないと金融機関は抵当権を実行します。
結局、親の不動産が競売にかけられてしまう可能性があります。

抵当権は残り続けますので注意が必要です。
まとめ
不動産担保ローンと税金・相続の関係は複雑に思えますがポイントは以下の通りです。
- 借入は所得にならず非課税。ただし利息は原則個人では控除不可。
- 債務免除や肩代わり返済は原則課税(所得税または贈与税)。ただし支払不能の場合など救済措置あり。
- 相続ではローン債務も相続対象。団信があれば残債ゼロ。なければ相続人が返済継続か、放棄も検討。債務は遺産から控除可能。
- 物上保証人が絡むケースでは、債務者・保証人いずれかの死亡時も抵当権は基本そのまま。契約内容に沿って対応が必要。

大きな額の話になりますので、適切に対処して損のないようにしましょう。