不動産担保ローンを利用する上で避けて通れないのが「担保評価額」という考え方です。
簡単に言えば、「金融機関がその不動産を担保に取る際に見積もる価値」のことです。
この担保評価額次第で、「いくらまで借りられるか」がおおよそ決まってきます。

担保評価額とは?
担保評価額とは、担保不動産を処分(売却)する際に見込める金額のことです。
金融機関にとっては「万一借り手が返済できなくなった場合、この不動産を売れば〇〇円回収できるだろう」という見積もり額です。

例えば、市場で5,000万円くらいで売れそうな不動産でも、担保評価額は4,000万円(市場価格の8割)とか3,500万円(7割)といった具合に、掛目を掛けて算出されます。
金融機関はあくまで慎重に見積もるため、「急いで売ることになったらこのくらいでしか売れないかも」という保守的な数字になります。
融資可能額はこの担保評価額に基づいて設定されます。
例えば評価額4,000万円なら、その全額まで貸すことはまずなく、さらにそこから概ね7~8割程度の範囲内が上限となります。
これを融資掛目とか融資率と言います。

融資掛目80%なら、評価額4,000万円の物件で最大3,200万円まで、といった具合です。
担保評価額の算出方法
担保評価額の計算方法は金融機関によって多少異なりますが、基本は不動産の評価額に一定の掛目を乗じて算出されます。
ポイントはまず「不動産の評価額」をどう出すかです。

1. 積算価格(原価法)による評価
土地評価
公的な価格指標(路線価、固定資産税評価額、地価公示など)や、近隣の実際の売買事例(実勢価格)を参考に計算します。
一般的には路線価や固定資産評価額に補正率をかけて求めたり、実勢価格をベースにすることもあります。
建物評価
建物を新築したらいくらか(再調達価格)を算出し、経過年数による減価分を差し引いて求めます。
RC造か木造か、築何年かなどで大きく変わります。築年数が経ちすぎると建物評価はゼロに近づきます。
積算価格は「その不動産をイチから作ったらいくらか」を元に、今の価値を算定する方法です。
金融機関は保守的に路線価ベースで土地を見積もることが多く、路線価がない地域では固定資産税評価額×一定倍率などで代用します。

2. 取引事例比較法による評価
近隣の類似不動産の売買事例を集めてきて、それらとの比較で価格を推定する方法です。
例えば「同じ町内で最近○○万円で売れた家があるので、それに照らすとこの物件は△△万円くらいだろう」という考え方です。

3. 収益還元法による評価
その不動産が賃貸に出せる場合、将来生み出すであろう純収益から逆算して価値を求める方法です。
年間家賃収入から経費を引いた純利益を「還元利回り」で割ります。
例えば年間200万円の純収益が期待でき、市場適正利回り5%なら、200万÷0.05=4,000万円が収益価格となります。
主に賃貸アパートやオフィスビルなどで用いられ、収益物件の評価に適しています。
ただ一般の住宅でも、賃貸可能なら参考値として出されることもあります。
金融機関は上記の手法を総合的に使って評価額を決めます。
例えば積算価格と収益価格を出してみて、低い方を採用する、といった具合です。
同じ物件でも銀行によって評価額が異なるのは、使う指標や重みづけが異なるためです。

算出例
郊外の戸建て住宅の場合
路線価評価: 土地200㎡ × 路線価10万円=2,000万円。
建物評価: 延床120㎡、再調達価額20万円/㎡=2,400万円、新築後20年経過で残価50%=1,200万円。
積算評価額=2,000+1,200=3,200万円。
この物件は賃貸需要があまり無いので収益還元は参考外。
従って評価額3,200万円とする。
担保掛目70%なら担保評価額2,240万円、融資上限もその範囲内となる。
都心の賃貸マンション一室の場合
積算: 土地持分評価500万円、建物評価なし(築古のためゼロ)=500万円。
収益: 家賃月10万円、年120万円、経費20万円差引純収益100万円、還元利回り5%で評価2,000万円。
比較: 近隣類似が1,800万円で売出中。
総合すると1,800万~2,000万円がマーケット価格と推測。保守的に評価額1,800万円と設定。
掛目80%で担保評価額1,440万円、融資上限目安。
担保評価額が借入可能額の上限とは限らない
注意したいのは、担保評価額がそのまま借入限度額ではないということです。

例えば、評価額から算出された上限が2,000万円でも、借り手の収入から見て毎月返せるのは1,000万円が限度、と判断されれば1,000万円しか借りられません。
特に銀行は担保評価額いっぱいまで融資することは稀で、「担保評価額」と「返済能力に基づく与信限度額」の低い方が最終的な限度額となります。
また、担保評価額を左右する要因としてマーケットの変動があります。
景気や不動産市況が悪化すれば、評価額も引き下げられる可能性があります。
